イーストジャパンプロジェクト

東京 Ejpデザイナーズ座談会

Ejpデザイナーズ座談会 ©2011 by Peter Brune

参加者

  • 隈研吾 (建築家/隈研吾建築都市設計事務所)
  • 中村拓志 (建築家/NAP)
  • 原田真宏 (建築家/マウントフジアーキテクツスタジオ)
  • 安東陽子 (テキスタイルデザイナー/安東陽子デザイン)
  • 坪井浩尚 (デザイナー/Hironao Tsuboi Design)
  • 太刀川英輔 (デザイナー/NOSIGNER)
  • 岡安泉 (照明設計デザイナー/岡安泉照明設計事務所)
  • 堂園有的 (隈研吾建築都市設計事務所所員/Ejp理事)


隈:震災のすぐ後に、東京発のものが地域の固有性をダメにしちゃったみたいなことをアメリカのFinancial timesに書いたんです。そういう問題意識のもとに、帰心の会を伊東豊雄さんや妹島和世さん達と立ち上げたの。それとは別で震災二週間後くらいに宮城県の和紙の職人のおばあちゃんに会いに行きました。三宅一生さんの服とかも作っている人で、とても印象がよかった。こういう人たちがたくさんいるんじゃないか、そういう人たちと何か出来たらいいなと思って東北の職人を応援するプロジェクト、Ejpをつくった。活動内容を簡単に言うとプロダクトを職人さんと一緒に作って、日本だけじゃなくて世界に発信していきたいなと思っている。まずは興味がありそうな人に声かけて、運動っぽくしたい。それから流すチャンネルは、社会的な問題だから知っている限りの人に声をかけようと思っている。デザイナーも企業も色々考えることもやれることも違うけど、帰心の会で伊東さんが一番初めに「こういうときは偽善だとかなんだって批判し合っていたら、結局すごく運動として力が無くなっていっちゃうから、お互いに批判し合うは辞めよう」って。良いこと言うなって思った。だからこの活動もいろんな人や企業が参加していける形にしたいし、国内外関係なく世界で一番面白い人たちが集まるようなグループにしていきたいなと思っています。

太刀川:今、東北復興の支援のプロジェクトを四つくらい並行でやっています。例えば一つが、牡鹿半島の鹿の角で何か作ろうっていうのです。他には、いろんな会社と一緒にどこか流域を選んで、流域を再生するっていうプロジェクトをやらないかって話がある。これは非常にEjpと志が近いなと思っていて、どこかのタイミングで軸がそろうというか、話し合いの上で協働がなんらか出来ると非常に広がりがあっていいのではないかなと思っています。そういうのってどうですか?

隈:いや、面白いと思うよ。基本的にはなるべく広がりがどんどんネットワーク的につながっていくほうがいい。拡散していっても質が落ちないっていうのが重要で、ぼくらがやるものは単にデザインがきれいってだけじゃなくて、新しいライフスタイルの提案なんだ。それはこの震災をきっかけにして始まるもので、ものを大事にすることとかさ、基本的なことに関わることがいいなと思っているわけ。Chidoriは組み方次第で棚にもテーブルにもなる。Chidoriはそういう汎用性を提案した商品だった。そういうライフスタイル提案型の商品を作りたい。大量生産して商売として成功したいわけじゃなくて、そこで作られたものが世の中にヒントを与えられるような文化的な発信をしたい。まとまったらどこか展覧会やるとか、そういう発信力があるほうがよい。そこが今回は大事なところなのかな。

原田:なんか柳宗悦がやっていたものの現代版みたいなイメージかなって思うんですよね。新しいスタンダードを東北の技術を使ってやるみたいな感じで、ぱっと消費的に消えていってしまうようなのじゃなくて、ずっと大事にしていくようなもの。伝統とモダンがつながっているようなものかなと印象をもっています。

堂園:外人のデザイナーっていいなと思うのが、先入観がないから、そこにあるものをとりあず何でもとって、自分の文化に照らし合わせると新しいものが出来るって感じがありますよね。

隈:イサムノグチの提灯は、日本人だったら絶対できなかった。あれはもともと葬式提灯なんだって。真っ白で何も書いてない提灯っていうのは、日本人の常識のある人間は、縁起悪くてデザインしなかった。でもイサムノグチは知らなかったから普通に葬式の提灯のデザインをやっちゃったんだよね。

原田:それぐらいデリカシーがないほうがいいんですかね。我々も有る意味そんな感じかもね。

堂園:もう既にアイディアある方とかは?

隈:太刀川君のこけしのやつとかはかっこよくて好きだな。

太刀川:僕はちょっと前にお話していただいたので、思いついたのをさっと送らせていただきました。こけしって旋盤加工だから、作り方がペッパーミルとかと一緒なんですよ。ぴゅーっとけずって、そこに筆に色つけてぴゅーっとするとストライプが勝手に描かれるってプロセスなんですけどそれでペッパーミルとか懐中電灯とかをつくったらいいんじゃないっていう話をして、それでパースを送ったんですよね。

隈:ペッパーミルと懐中電灯が一緒っていうのが面白いね。どんどんアイディア出してもらって、飛んだ商品も混じっていて、人が面白いとおもうものを作って欲しいな。なんか発信したいと思うんだよね。新しい文化を。


  • Ejpデザイナーズ座談会 ©2011 by Peter Brune
  • Ejpデザイナーズ座談会 ©2011 by Peter Brune
  • Ejpデザイナーズ座談会 ©2011 by Peter Brune
  • Ejpデザイナーズ座談会 ©2011 by Peter Brune

太刀川:質問ですけど、イメージは基本地場産業じゃないですか。でも工場ってたくさんあって地場産業に限定するのか、それともメイドイントーホクにするのかで大きくちがうんじゃないかなと思って。

隈:なんかイメージしている?地場産業じゃないけど東北に固有なもの。

岡安:そこのところどう考えるのかな、って。例えば今言った旋盤加工も東京にももうぎりぎりだけど一生懸命やっている旋盤加工屋もいるじゃないですか。あの技術が東北だけに限定したものをピックアップして何かを考えるのか、それともありとあらゆる技術のなかに、東北にもあるし東京にもあるけど、東北にそこにある工場をうまく使うっていうのも一つだと思うし、出来上がりが東北らしさみたいなものを必ず持たないといけないのか、あちらの人をうまく動かしていたらそれはどんなものでもいいのか、色々方向性はありえますね。

隈:僕は無理に東北らしいものとかじゃなくてもいいと思っているんだけど、旋盤の話だとかさ、あー東北でもこういう事をやっているんだ、みたいな何か発見がある面白さがあればいいと思うな。

安東:色々と仕上げはこっちの地域とか、そこで全部終わらないですよね。例えば職人さん、機織屋さんは東北だけれども、最後の仕上げの行程で京都とかってこともあるし。どこに基本っていうか、どこを経由してればいいのか、そのへんがちょっと難しいですね。

岡安:流域産業みたいな話だと一機に解決する可能性はあるでしょう。山で木を切って、川に流して、途中で削ってだんだん下で漆塗ってみたいな、流域全体だとストーリーが完結しうる。そこがなにかっていうと一つのプロダクトが一つの地だけで完成する可能性があるかもしれないと思う。だけど確かに安東さんが言うように、物って横もちでいろんな場所行って最後出来上がるところまで何箇所も移動しててってことがあって全国渡り歩いちゃっている可能性ってありますよね。

隈:もちろん職人を応援するっていう大きなくくりはあるけど微妙なものが混じっていても志が高ければいいかなと思っています。

中村:全部一貫している必要もないし、無理にこだわる必要はないんですけど、被災地でいろいろなお話を伺って分かったことは雇用を求めているってことですね。東京からこうしたらいいっていう案を持ってくる人たちはたくさんいるんですけど結局東京の押し付けを持ってきているにすぎない。だからちょっとでも雇用が生まれるのが前提なのかなと実感しています。

隈:デザイナーってなかなか雇用のこととか考えないよね。雇用の問題が大事でさ、自分たちのプランニングっていう枠の中だけで何が善か悪かって話だけで現地でどう雇用を生み出すかってアイディアはめったにない。Ejpは職人や技術を守るって事だけじゃなくて、この活動が一人一人の生活の何か糧になるもののヒントだってことを言いたい。

太刀川:このプロジェクトにとって雇用を可視化するっていうのはキーでしょうね。どんなデザイナーが参画しているかとか、どの地場産業が使われたかってことに加えて、どれだけ仕事が生まれているか見えるようにしないと。やっぱりそれに関わっている人のためだということをちゃんと見せて。彼ら自身もそういうものを欲しているだろうし、僕らも本質的にそうあるべきだと思っているわけですから。

安東:実際に手伝ってくれる職人さんたちはどういう風に探しているのですか?

隈:今は無謀にどんどん行っているね。

堂園:お会いしたところで更に紹介してもらっています。Chidoriの家具屋さんに関しては紹介の紹介をつないだ感じです。なるべくいろんな人に我々デザイナーがこういうことをやりたいっていうことを知っていただくことによって、ネットワークを広げていきたいですね。職人さんのなかにもネットワークがあって、集成材を作っている方々に会った後に竹屋さんに会ったら「 (集成材を扱っている人と) 先週会ったよ」って感じなので。少しずつ認知していただくってことが必要なのかなと思います。

岡安:開発に関しては職人さんなり技術なり、こういうことがやりたいっていうのを決めて、そのあとモノを作ったりするフェーズは僕らが実際にリサーチを行って、作ってもらって途中でサンプルをチェックみたいな感じするんですか?それとも誰か情報集める人とか設定するんですか?

隈:それぞれが情報収集をして、一応僕がチェックして、それぞれが自信のあるものを作って、デザイナーとして自分の名前入れる。自分でやるっていう人たちの集合体って感じかな。


  • Ejpデザイナーズ座談会 ©2011 by Peter Brune
  • Ejpデザイナーズ座談会 ©2011 by Peter Brune
  • Ejpデザイナーズ座談会 ©2011 by Peter Brune
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太刀川:お店ではどういう風に商品を扱うの?たとえばBALS TOKYOさんの商品として売るのか、Ejpと共同して販売していますというラベル等をつけるのか。

堂園:基本的には「~with Ejp」としてあくまでもブランドとして商品をおいていただくこと が最前提です。

坪井:全ての商品を見られるショールーム的なものは作るの?

堂園:ウェブサイトで全ての商品を見られるようにして、どこで売っているかとかの情報を載せます。機会に応じて展覧会をする予定です。

坪井:その展覧会で物販もしちゃうっていうのが効果的ですよね。

堂園:このプロジェクトの強みって言うのはやはり展示にあると思うんです。そこの部分を生かしつつ、商品に関しては付加価値を与えつつ、みんなが負担をあまり抱えずにやっていけるかということが大切だと思います。

隈: メンバーも絶えず増えて、一回の展覧会で終わるんじゃなくて、この活動がずっと継続していくのが重要なんじゃないかなと思うわけですよ。コンセプトと同じですよね。地域の生業を活性化させるんだけど、閉じた市場じゃなくて、いっぱいつながっていく。こんなイメージが出来てればいいなと。

坪井:新しいライフスタイルを作るアイディアとか、デザインとか、どういうものを期待されているのですか?メンバーにはテキスタイルもインダストリアルも建築もいるわけですよね。

隈:志でいうとやっぱりただのモダンデザイン・グッドデザインを超えたい。優しいけど切れ味がいいみたいなそういう感じがトレンドにならないかなと思って。みんなそれぞれ自分のことを超えて本当にやりたいことをやってください。そういう感じで作ってもらいたいです。

Photos: ©2011 by Peter Brune